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~基本情報~

●名称:特定非営利活動法人 共働学舎 新得共働学舎、農事組合法人 共働学舎新得農場

●設立:1978年(任意団体としての共働学舎は1974年、NPO法人としての共働学舎は2006年)

●住所:北海道上川郡新得町字新得9-1

●メンバー:75人前後

●事業:酪農、チーズ造り、養豚、養鶏、稲作、畑作、工芸、販売、飲食、農業体験等

●特徴:心身に不自由を持つ人との共同生活、社会福祉法人ではなく公的補助は受けない

●代表:宮嶋望さん

●連絡先:Tell : 0156-69-5600 Fax : 0156-64-5350 Mail : shintoku@kyodogakusha.org

 

~概要~

 共働学舎は1974年、長野県で宮嶋眞一郎という人物が、心身に不自由を抱える人が「自労自活=自立した労働と生活」を送る為、数人の仲間と共に設立した、メンバーが共同で農業と生活を営む農業共同体です。

 社会福祉法人ではないので、メンバーに職員と利用者と言う区別はなく、公的な助成、支援も受けていません。

2016年現在、全国5か所の農場と1か所の事業所で、心身に不自由を抱える人も、そうでない人も合わせて150人近くが生活を送っています。新得農場は1978年、共働学舎の4番目の農場として設立されました。

 十勝平野西部の山麓の農場で、心身に不自由を持つ人も含め75人近くのメンバーが共同生活をしています。

能率・効率に囚われず、牛を育て、乳を搾り、品質を追い求めたチーズを作って、国内外の数多くの賞を受賞。

そのチーズは多くの人々に愛され、農場の経済的な、また、メンバーの精神的な「自立」の基盤となっています。

 

~場所~

 北海道札幌市から国道274号線を南東の方向へひたすら走り、空知南部の畑作地帯、日高山脈の樹海と山道、

北海道を東西、道央と道東に分ける日勝峠の峠道を越えると、十勝平野の西の入り口、上川郡清水町に着きます。但し、2016年08月の台風の影響で、同11月06日現在、国道274号線が日勝峠で通行止めとなっている為、道東自動車道の占冠ICから、十勝清水ICまでの区間の高速道路を利用して、峠を迂回する必要があります。

 札幌から高速道路を利用する場合、道央自動車道を南下して、千歳恵庭JCTで道東自動車道に入り、道東自

動車道を東へ進み、十勝清水ICで降ります。そして清水町から国道38号線を北上すれば、新得に着きます。

旭川、富良野方面から一般道路で行く場合、国道38号線を南東方向へ走り、狩勝峠を越え、新得に入ります。新得市街から、新得山・牛乳山の方向へ橋を渡ると、右手に道立農業試験場が、左手に新得共働学舎があります。

 

~施設~

 新得共働学舎は新得市街北部の新得山と牛乳山、二つの山の麓の100haを超える敷地で農業を営んでいます。

施設の大半は敷地の南東、新得市街から入ってすぐの場所に位置し、残りの敷地の大半は放牧地か山林です。

 施設には、メンバー全員が集う食堂兼住居(写真参照)や、山小屋風の住居数棟、研修生寮といった生活の場や、牛舎、搾乳室、チーズ工房、豚舎、鶏舎、厩舎、羊小屋、養蜂場、田んぼ、畑、農業用ハウスといった農業施設や、カフェ兼売店「ミンタル」、都市農村交流体験施設「カリンパニ」等の施設が有り、75人前後のメンバーがこの農場で働きつつ、共働生活を送っています(中には新得町内の住宅に住みながら農場に通う方もいます)。

 新得共働学舎の建物の特徴は、人間や動物はもちろん、植物や微生物(人体やチーズの中にいる)に至るまで、生き物に良い環境を与える環境作りに配慮されている事で、その為に、建物の地下や牧場の土中に炭を埋めたり、食堂や牛舎やチーズ工房を、鉄筋や鉄骨やトタンを使わず、木造で作ったり、建物に陽の光が入る様にしたり、飲み水の浄水器を使ったり、食べ物は自分達で有機農法で自給し…と、住環境から食生活まで配慮しています。

(炭や木を使い、鉄を使わない事の効果は、宮嶋望代表の著書等が詳しいです。)

~人々~

 新得共働学舎には、老若男女75人近くのメンバーがいます。そして、心や体に病気や障害を持っている人や、不登校や引きこもり、ニートだった人、共働学舎の理念やに共感して入った人、酪農やチーズの製造、有機農法を学ぶ研修生、ボランティア、パートのスタッフと色々な立場の人がいます。カフェ兼売店の「ミンタル」や、体験施設の「カリンパニ」のお客さん、国内外の農業界、政財界の視察者も沢山訪れ、農場はとても賑やかです。

 メンバーは基本的に、対等なNPO構成員という立場です。もちろん、NPOの理事や農場の代表はいますが、彼らがメンバーに仕事を命令する、という事はなく、農場や仕事や宿舎の運営は、毎朝、食堂でメンバー全員がミーティングを行い、各々がその日の希望や能力、適性、あるいは体調、予定に合わせ、自分で仕事を決めます。それでしっかり、農場の仕事は回っています。寧楽共働学舎も同様でしたが、自主性を尊重したスタイルです。

 

~生活~

 新得共働学舎では、平日の食事の時間(朝食7時半、昼食12時、夕食19時半)と、日曜が休みである事だけ決められていますが、起床時間や就寝時間は決められていませんし、日曜以外も休みたければ休む事はできます。

 が、大体の生活のリズムはあり、凄く早い人で4時前から、他の人も4時半過ぎから、バラバラと起きだして乳牛の搾乳や野菜の収穫、朝食の準備等の仕事をします。7時半から朝食を食べ、8時15分からミーティング。ここで今日は誰が何をするかを決め、9時頃から12時頃まで仕事をして、12時頃から14時頃まで昼食と休憩、14時頃から16時頃まで仕事をして、休憩し、16時半頃から夕方の搾乳や夕食の準備、19時半から夕食です。後は自由時間で、入浴も就寝も好きな時間に出来ます。朝が早いので、夜も21時過ぎには静かになりますが。平日でも、調子が悪い、用事があるといった場合は、休むと言えば休めます。あくまえ自主性を尊重されます。

 

~宮嶋望さんとチーズと「自立」のこと~

 新得共働学舎の設立者であり、代表である宮嶋望さんは、共働学舎を設立した、宮嶋眞一郎さんの長男です。

自由学園という、学生寮での共同生活や農業など独自の教育方法、生徒や学生が自分達で学校施設を維持管理する事などが特徴の学校の最高学部(大学相当)を卒業し、米国ウィスコンシン大学マディソン校畜産学部を卒業、

帰国後すぐ、新得町で新得共働学舎を設立しました。普通の農家ですら、生乳の出荷だけでは生活が厳しい世界。ハンデを持つ人の集まりである新得共働学舎が生き残るには加工品、それも、能率、効率や世間の流行り廃りに囚われず、品質を求め、じっくり製造に取り組めるナチュラルチーズが最適だと考え、チーズ作りを始めました。

 最初は望さんがリーダーシップを発揮して、メンバーに指示を出して、メンバーは指示をこなす体制でしたが、望さんが無理が祟って倒れた時に、指示を出さなくても、メンバーがちゃんと仕事を出来ていた事がきっかけで、前述の様にメンバーの自主性に任せる方針になりました。そして、近所の農家さん、新得の町長さん、帯広のレストラン、フランスのチーズ職人など多くの人々の協力と、望さんを筆頭に、新得共働学舎のメンバーの努力で農場を拡大し、工房を建設し、チーズの品質を高めます。一方、91年の工房、92年の牛舎の新設で借金を抱え、望さんがチーズ造りに掛かりっきりで営業が出来ず、売上が上がらず、という苦しい状況が数年間続きました。

 ですが98年、中央酪農会議主催の「第1回オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」で金賞とグランプリを獲得した事を皮きりに、国内外の数多くのコンテストで賞を受賞、売り上げも増え、苦境を乗り切りました。

望さんの話では、現在、新得共働学舎は2億円以上の事業収入があり、事業に必要な経費と、生活に必要なお金は、事業収入でやりくり出来る様になりました。これは新得共働学舎のメンバー、一人一人の「自立」と、農場としての経済的「自立」を目指した結果だと思います。メンバーは自分の希望や能力に合わせ、自分で考えて仕事をする。望さんは、寄付に頼らない運営を目指して、時には多額の借金をして、必要な事業に投資する。この二つが、酪農、チーズ造りに必要な環境を整え、品質を高め、新得共働学舎全体の自立につながったのだと、そんな風に感じました。

​ウェブサイト(NPO法人共働学舎):http://www.kyodogakusya.or.jp/

ウェブサイト(新得共働学舎)   :http://www.kyodogakusha.org/

ウェブサイト(宮嶋望氏)     :http://nozomu-miyajima.net/

03:新得共働学舎

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