東京里山シェアリング
19:新しき村
~基本情報~
●名称:一般財団法人新しき村
●設立:1918年
●住所:埼玉県入間郡毛呂山町大字葛貫423番地1
●メンバー:13人
●事業:稲作、畑作、販売、美術館
●特徴:文豪 武者小路実篤らが設立した、現存する日本最初の農業共同体
●代表:石川清明さん
●連絡先:Tell、Fax:049-295-5398 Mail: ウェブサイトより問い合わせ可能
~概要~
新しき村は1918年、宮崎県で文豪 武者小路実篤と仲間達が「人間らしく生きる」「自己を生かす」社会の実現を目指して設立しました。後年、宮崎の「日向新しき村」はダム建設で大半が潰されますが、1939年、埼玉県に「東の村」を設立、そちらに本拠地を移しました。「日向新しき村」には今でも数人のメンバーがいて、資料館もあります。「東の村」には現在、十数名のメンバーがいて、米や野菜、お茶、椎茸などの作物の生産・販売、美術館の運営、出版物の発行、太陽光発電等の事業を行いながら、敷地内の住居に各々が暮らし、仕事や炊事や食事を一緒にする、という形で共同生活を送っています。
現存する日本の農業共同体としては一番古く、また、武者小路実篤が設立したという由緒ある農業共同体です。
~場所~
新しき村がある埼玉県入間郡毛呂山町は埼玉県の西部、関東平野西端、秩父山地東麓の丘陵地帯にあります。
東京からは関越自動車道の坂戸西スマートICか鶴ヶ島IC、首都圏中央連絡自動車道の圏央鶴ヶ島ICで降り、
どちらのルートも都心から一時間半掛かりません。県道30号線から村に続く道に入り、JR八高線の踏切を超え、毛呂山町と隣りのヶ島市の境界の西側に位置します。北と東には住宅街、南と西には森や田畑が広がっていて、
更に西にはゴルフ場が、更に奥には秩父の山々が連なります。
公共交通機関で行く場合、最寄り駅は東武越生線「武州長瀬駅」で村まで徒歩20分ほど。東武越生線「武州長瀬駅」からタクシーで5分ほど。JR八高線「毛呂駅」からタクシーで10分ほど。JR八高線「高麗川駅」からは国際医療センター経由埼玉医大ゆきのバスがあり、「国際医療センター内」で下車して徒歩15分ほどです。
~施設~
新しき村には10ha程の所有地と3ha程の借地があり、その中に、メンバーの住居が十数戸、メンバーが食事や入浴を行い、事務所や売店やステージも備えた「公会堂兼食堂」、村の歴史や武者小路実篤の作品を紹介する
「新しき村美術館」、村人の作品を紹介する「新しき村ギャラリー」といった生活施設、文化施設があります。 また、田んぼや畑、茶畑といった圃場、以前使われていた牛舎や鶏舎、太陽光発電パネルも設置されています。
「新しき村美術館」は1980年に設立され、武者小路実篤が村での生活や村の農産物を題材に描いた日本画、油絵、素描、原稿、書、等の所蔵作品数が約400点あり、実篤と親交のあった長与善郎、千家元麿、倉田百三、中川一政、椿貞雄、河野通勢、高田博厚、周作人や、村の会員の作品、実篤の愛蔵品などが展示されています。美術館には図書館も併設され、実篤や会員の作品、新しき村の資料、文芸雑誌「白樺」復刻版などがあります。
~歴史~
明治後期から昭和前期頃、日本各地で作家や知識人、社会主義者が農業共同体や、農民・農家子弟向けの私塾を開きましたが、現在、新しき村以外は存在しません。また、戦後、日本各地で農業共同体や農業コミューンが結成されましたが、殆ど短命で終わってしまいました。その様な中で、2016年現在で設立98年、2018年には設立100周年を迎える、日本最初期の農業共同体にして、現存する日本最古の農業共同体が、新しき村です。
1918年、宮崎県児湯郡木城村で武者小路実篤の「人間らしく生きる」「自己を生かす」社会を設立する構想に賛同した仲間15人が村を設立しました(日向新しき村)。周囲を山に囲まれ、三方を川に囲まれ、外部と村との行き来は船を使っていました。家を建て、畑を作り、武者小路実篤が著作や講演で村を紹介すると、賛同を集め、
全国各地に新しき村を応援する「支部」が設立されました。
ですが、設立から約20年後、村はダム建設でダムの底に沈む事になってしまいます。そこで1939年、埼玉県
入間郡毛呂山町に1.3haほどの土地を得て、東京支部の協力のもと、「東の村」を設立、再出発を図りました。
こちらでも家を建て、畑を耕し、自給用の米や麦や野菜を作り、牛や鶏も飼っていました。村人も徐々に増え、一番多い時では60人以上が新しき村で生活をしていました。
東の村の出来事を簡単に紹介します。1948年、新しき村は財団法人化し、また、上野美術館で美術展を開催。1968年、村の子供の為の幼稚園を設立(現存せず)。1976には武者小路実篤が死去しますが、新しき村は残り、共同生活をしながらの野菜等の生産・販売、芸術活動、地域のイベントへの参加など、様々な活動は続きます。
現在、東の村では毎年の恒例行事として、4月の「花の会」、8月の「労働祭」、9月の「創立記念祭」があり、村人、村外会員、近隣住民がバザーや演芸会が催します。また、「蛍を見る会」「芋煮会」なども村外会員が開催、また、村に興味がある人も参加可能な「喜楽会」というお茶会、お話し会なども毎月開催されています。
1918年の設立からもうすぐ100年を迎える「新しき村」。100年前と変わらない理想と精神を保ちながら、村の人々の活動は続いています。